生命保険のなかには、「貯蓄型保険」と呼ばれるものがあります。生命保険に加入を検討している人の中には、「貯蓄型保険とはどんな保険?」「貯蓄型保険のメリットとデメリットは?」「貯蓄型保険は本当におすすめ?」などの疑問を感じる人もいるでしょう。
この記事では、貯蓄型保険が本当におすすめかどうかについて解説します。貯蓄型保険のメリットやデメリット、おすすめする人も紹介するので、保険選びに役立ててください。
貯蓄型保険とは
まず最初に、貯蓄型保険の概要について解説します。
貯蓄型保険と掛け捨て型保険の違い
生命保険は、貯蓄型保険と掛け捨て型保険に分類できます。
掛け捨て型保険とは、「保険料が掛け捨て」になる保険のことです。満期になっても満期保険金が支払われない保険や、解約したとき解約返戻金が0円またはほとんどない保険です。「定期保険」や「医療保険の定期タイプ」などが該当します。
一方、貯蓄型保険は、保険料の払い込みが終わると一時金や年金を受け取れる保険や、解約したときある程度の解約返戻金を受け取れる保険のことを指します。
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貯蓄型保険の種類
貯蓄型保険の主な種類は、「養老保険」「学資保険」「個人年金保険」「終身保険」などです。
養老保険や学資保険は、満期時に一定の満期保険金が受け取れます。また、学資保険の中には、満期前の進学時などの祝い金などを受け取れるものもあります。
個人年金保険は、一時金ではなく一定期間(10年、15年など)または一生涯分割して年金を受け取る保険です。
養老保険や学資保険、個人年金保険は、満期保険金や祝い金、年金などが支払われるため、貯蓄型保険と呼ばれます。
終身保険については、本来は死亡した時に死亡保険金が支払われる保険でほかの貯蓄型保険とは異なります。しかし、解約した時に、将来の死亡保険金支払いに備えて積み立てたお金が解約返戻金として一定金額が支払われるため、貯蓄型保険に分類されることもあります。
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貯蓄型保険のメリット
貯蓄型保険の主なメリットは、次の3つです。
メリット①:保障と貯蓄を同時にできる
養老保険や終身保険では、保険加入と同時に一定の死亡保障が約束されます。死亡保障を得ながら、満期時もしくは解約時にたまったお金を受け取ることができます。ただし、加入年齢や解約の時期によって、満期保険金や解約返戻金が支払った保険料を下回ることがあります。
学資保険は、契約者(一般的に親)の死亡を保障する特約を付加しなければ、死亡保障はありません。しかし、契約者が死亡した場合、保険料の支払いなしで契約が継続し祝い金や満期保険金が支払われるため、一定の保障があると言っていいでしょう。
個人年金については、死亡時には支払った保険料相当額が死亡保険金として支払われるだけであるため、死亡に対する上乗せ保障はありません。
メリット②:計画的に資金準備ができる
貯蓄型保険の場合、毎月一定額の保険料(月払い契約の場合)を積み立てることにより、決まった時期に決まった金額の満期保険金や年金などが受け取れます。支払いや受け取りの金額と時期が確定しているため、計画的に資金準備ができます。
銀行預金などでも積み立ては可能ですが、引き出しが簡単にできてしまうため継続しにくい面もあります。銀行預金を引き出す場合と比較して、生命保険を解約する方が手間がかかり心理的ハードルも高いと考えられるため、貯蓄型保険の方が資金準備に適しているといえます。
メリット③:税制上のメリットがある
生命保険には、「生命保険料控除」といわれる税制上のメリットがあります。支払った保険料の一定額が所得控除されるため、所得税や住民税が安くなります。
また、満期保険金などを受け取るときも、税金面で銀行預金より有利であることが一般的です。銀行預金については、利息に対して20.315%(地方税と復興特別所得税を含む)の税金が課されます。
満期保険金にも税金がかかりますが、加入期間が5年を超える場合、一時所得として税金を計算します。一時所得には50万円の特別控除があるため、満期保険金額が支払った保険料を50万円を超えて上回らなければ、税金はかかりません。
貯蓄型保険のデメリット
貯蓄型保険の主なデメリットは、次の3つです。
デメリット①:資産運用として考えると利回りはよくない
貯蓄型保険では、支払った保険料を大きく上回る満期保険金や年金は期待できないため、資産運用として考えると利回りはよくはありません。
たとえば、A保険会社の個人年金保険のシミュレーションでは、20歳加入(男性)60歳年金開始(年金の支払いは10年)で保険料が毎月1万円の場合、年金額は49万1,200円です。保険料の総額は480万円、年金受取総額は約491万円となるため、40年で約11万しか増えません。
40年間毎月1万円投資し、複利の運用利回りが年1%ならば積立額は約590万になり、個人年金保険の年金額を大幅に上回ります。
デメリット②:掛け捨て型と比較して保険料が高くなる
保険金額を同額にして、掛け捨て型保険と貯蓄型保険を比較すると、貯蓄型保険の保険料は高くなります。
B保険会社の定期保険(掛け捨て型保険)と終身保険(貯蓄型保険)で比較します。30歳の男性で死亡保険金額1,000万円の月払い保険料は次の通りです。
- 定期保険(10年更新):1,690円
- 終身保険(60歳払済):2万1,640円
- 終身保険(終身払込):1万2,710円
小さい子どもがいる家庭の世帯主が数千万円の死亡保障を終身保険で準備する場合、かなりの保険料負担を覚悟しなければなりません。定期保険なら5,000万円の死亡保障でも、保険料は一か月あたり1万円以内に収まります。
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デメリット③:解約や満期で保障がなくなる
貯蓄型保険は保障と貯蓄を同時にできるというメリットがある反面、解約や満期によってお金を受け取ると保障がなくなってしまうというデメリットがあります。
解約や満期後に新たな保険に加入する場合、健康状態によっては保険に加入できない可能性や、年齢が上がったために保険料が高くなる可能性もあります。
貯蓄型保険をおすすめする人
次に、貯蓄型保険をおすすめする人を紹介します。
おすすめする人①:掛け捨てが嫌な人
保険料が掛け捨てになることが嫌な人には、貯蓄型保険がおすすめです。保障の必要性は感じていても掛け捨ては勿体ないと考える人もいるでしょう。貯蓄型保険なら、保障も貯蓄も同時に準備できます。
一定期間の死亡保障を準備したいときは養老保険、死亡保障がいつまで必要か決められないときは終身保険がおすすめです。
おすすめする人②:計画的に資金を準備したい人
計画的に資金を準備したい人にも、貯蓄型保険がおすすめです。毎月一定額の保険料を積み立てすれば、決まった時期に決まった金額が受け取れます。保険加入時には、将来資金が必要な時期に合わせて、満期時期などを決めましょう。
保険料を給与天引きや口座振替にすると、支払いをあまり意識することなく継続できます。
おすすめする人③:急な出費にも備えたい人
急な出費が必要になった時に備えてある程度の解約返戻金が受け取れる保険を希望する人にも、貯蓄型保険がおすすめです。
ただし、加入後すぐに解約しても解約返戻金はほとんどありません。また、長期間加入した後に解約した場合でも、解約返戻金が支払った保険料を下回る可能性はあります。
貯蓄型保険をおすすめしない人
最後に、貯蓄型保険をおすすめしない人についても紹介します。
おすすめしない人①:運用で資産を増やしたい人
お金を上手に運用して資産を増やしたい人には、貯蓄型保険はおすすめしません。貯蓄型保険(終身保険を除く)は満期までかければ確実にお金を貯められる一方、前述した通りあまり高い利回りは期待できません。
資産を増やすことが目的なら、株式や不動産などへの投資を検討してみましょう。
おすすめしない人②:保険料を抑えて大きな保障を準備したい人
一家の大黒柱である世帯主など大きな保障を準備したい人などには、貯蓄型保険はあまりおすすめできません。死亡保障が大きくなると、保険料が高額になるためです。
ただし、掛け捨てが嫌で保険料が高額になっても問題ないという人には、貯蓄型保険も選択肢の1つです。
おすすめしない人③:短期的な資金準備をしたい人
短期的な資金準備をしたい人には、貯蓄型保険は向いていません。ほとんどの貯蓄型保険は、10年以上の長期的な資金準備を前提としているため、短期で解約などをすると支払った保険料がほとんど戻ってきません。
数年単位で確実にお金を貯めるには、元本保証の銀行預金などがおすすめです。
貯蓄型保険に関するよくある質問
ここからは貯蓄型保険に関するよくある質問について答えていきます。
貯蓄型保険のメリットはなんですか?
貯蓄型保険のメリットは下記の通りです。
- 保障と貯蓄を同時にできる
- 計画的に資金準備ができる
- 税制上のメリットがある
保障を受けられるだけでなく貯蓄も行うことができるのが大きなメリットです。
また、満期の時期が決まっているため、資金を積み立てているという気分で利用することもできます。
貯蓄型保険を契約するデメリットはありますか?
貯蓄型保険を契約するデメリットは下記の通りです。
- 資産運用として考えると利回りはよくない
- 掛け捨て型と比較して保険料が高くなる
- 解約や満期で保障がなくなる
貯蓄は可能ですが、資産運用とすると利回りが悪く受け取れる金額があまり増えません。
また、保険料が高くつく傾向にあるので、保険料を抑えたい方には不向きと言えるでしょう。
貯蓄型保険はどんな人に向いていますか?
貯蓄型保険は下記のような人に向いています。
- 掛け捨てが嫌な人
- 計画的に資金を準備したい人
- 急な出費にも備えたい人
保険に加入して何事もなかった場合に掛け捨てになって欲しくない人や、将来の資金を用意しておきたいという方は貯蓄型の保険がおすすめです。
運用で資産を増やしていきたいという方にはあまり向いていないので注意しましょう。
貯蓄型保険は死亡した場合にどうなりますか?
終身保険の場合、死亡保険金として受け取ることができます。
そのため、親族に財産を残しておきたいという方にはおすすめと言えるでしょう。
まとめ:利回りは高くないが確実に資金準備したい人には貯蓄型保険もおすすめ
貯蓄型保険は、保障と貯蓄を同時にできる保険です。保険料の掛け捨てが嫌な人や、確実に資金を準備したい人にはおすすめです。ただし、解約や満期などでお金を受け取ると保障がなくなってしまうため、必要な保障を長期的に準備できるかを慎重に検討しましょう。
保障は保険料の安い掛け捨て型保険で準備し、貯蓄はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを使って資産運用するという選択肢もあります。