損害保険と生命保険の違いとは?基礎知識や重複する保険の有効性など解説

損害保険と生命保険は、どちらも保険であることには変わりありません。しかし、損害保険と生命保険の違いは何かと聞かれると、よくわからない人も多いのではないでしょうか。

実は、損害保険と生命保険には6つの違いがあります。

そこで本記事では、損害保険と生命保険の違いを一覧表にまとめたうえで、共通点と違いをそれぞれ紹介します。

損害保険と生命保険は共通している部分もあり、基礎知識を理解して共通点と違いを把握しておかなければ「保険料を払い過ぎている」状況もありえますので、ぜひ参考にしてください。

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>>内部リンク(483.生命保険 選び方)
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目次

損害保険と生命保険の違い一覧表

損害保険と生命保険の基礎知識の概要を以下の一覧表にまとめました。この資料を参考にしてください。

損害保険
生命保険
根本概念
相互扶助
取扱会社
損害保険会社
生命保険会社
保険事故
モノの偶発事故
人の生死
保険金額
実損害額の補償
定額給付の保障
保険期間
一般に1~2年程度と短期間
一般に10~30年と長期間
主な加入チャネル
代理店
営業職員
税制
地震保険料控除
生命保険料控除
備えられるリスク
・交通事故
・火事
・台風
・地震
・死亡
・傷病
・老後
・介護
具体例
・火災保険
・傷害保険
・自動車保険など
・定期保険
・終身保険
・個人年金保険など

損害保険と生命保険は、根本的には相互扶助のしくみであることは共通しています。しかし、細かく見ていくと以上のような違いがあります。

損害保険と生命保険の共通(重複)点は?

損害保険と生命保険について、保険としては相互扶助のしくみが共通しており、保険会社においては第三分野の保険商品を取扱える点が共通しています。

それぞれもう少し詳しく確認していきましょう。

  • 相互扶助のしくみはどちらも同じ(収支相等の原則)
  • 第三分野の保険商品はどちらも取扱える

相互扶助のしくみはどちらも同じ(収支相等の原則)

損害保険と生命保険は、相互扶助のしくみで成り立っている点はどちらも同じです。「相互扶助」とは、わかりやすくいうと「助け合い」という意味であり、身体のリスクにも必ず備えられます。

同じリスクを抱えている人たちがお金を出し合って実際にそのリスクが生じたとき、集めたお金の中からその人にお金が支払われます。

例えば、家計を支えている年収500万円の人が急に病気や事故で働けなくなった場合を考えてみましょう。

保険の知識があり、貯蓄が十分にあれば問題ありませんが、仮に貯蓄がまったくなければ治療費の一部や家族の生活をまかなうことができません。

そこで保険という助け合いのしくみを利用すれば、貯蓄が不十分であっても保障または補償を得ることができます。

覚えておきたい保険における2つの原則
保険料を適正かつ公平なものとするため、保険には収支相等の原則と給付反対給付均等の原則があります。
収支相等の原則とは、保険会社における収入と支出が等しくなる原則です。つまり、支払われる保険金の総額を契約者1人ずつ公平に負担することが原則となっています。
しかし、例えば生命保険においては20歳より60歳の人のほうが死亡率は高いため、保険料も相応に高くなってしまいます。この原則が給付反対給付均等の原則です。

第三分野の保険商品はどちらも取扱える

損害保険を取扱う会社を損害保険会社といい、生命保険を取扱う会社は生命保険会社といいます。それぞれ第1分野と第3分野の保険商品を取り扱っています。

第三分野の保険商品は、損害保険会社でも生命保険会社でも取扱うことができるという共通点があり、財産や身体の損失に対する保障が可能です。

なお、第三分野とは生命保険でも損害保険でもない保険のことを指し、具体的には傷害保険や医療保険が第三分野の保険です。

損害保険と生命保険の6つの違い

損害保険と生命保険には、6つの違いがあると冒頭で紹介しました。6つの違いについてそれぞれ解説します。

  • 違い①保険業法に定められる免許の種類
  • 違い②保険金の対象(保険事故)
  • 違い③保険金の算定方法
  • 違い④保険期間
  • 違い⑤募集形態(加入チャネル)
  • 違い⑥税制上の取扱い(所得控除)

違い①保険業法に定められる免許の種類

保険商品ではなく会社に関する違いですが、損害保険と生命保険は、保険業法によって明確に区分されています。

具体的には、保険業の免許の種類として「生命保険業免許」と「損害保険業免許」の2つが規定されています。

第三条 保険業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、行うことができない。
2 前項の免許は、生命保険業免許及び損害保険業免許の二種類とする。

引用元:e-Gov法令検索「保険業法」

免許が異なることから、生命保険会社は損害保険を取扱うことはできません。また、損害保険会社が生命保険を取扱うこともできません。

違い②保険金の対象(保険事故)

保険金は、あらかじめ想定されたリスクが実際に生じた場合に支払われます。ここでいう「あらかじめ想定されたリスク」が、いわゆる保険事故です。ケガや疾病が原因の入院などが該当します。支払事由とも呼ばれます。

損害保険と生命保険それぞれ、保険金の対象は以下のとおりです。

  • 損害保険:モノの偶発の事故
  • 生命保険:人の生存または死亡、身体の疾病やケガによる入院

以上のように、損害保険はモノに関するリスクに備える保険、生命保険は人に関するリスクに備える保険といった違いがあります。

違い③保険金の算定方法

損害保険と生命保険では保険金の対象が異なりますが、保険金の算定方法にも違いがあります。

  • 損害保険:実損払い
  • 生命保険:定額払い

損害保険は実損払いです。例えば自動車保険なら、事故によって生じた第三者への損害賠償責任について、自賠責保険の金額を超えた部分について保険金が支払われます。

一方、生命保険は人の生命に値段は付けられないため、あらかじめ約束した金額を保険金額とします。

関連記事:「保証」「保障」「補償」それぞれの意味を説明できますか?

違い④保険期間

損害保険と生命保険は、保険期間が大きく異なります。

  • 損害保険:1年程度
  • 生命保険:20~30年程度

なお、生命保険でも比較的短期間で契約を更新することがあります。

違い⑤募集形態(加入チャネル)

損害保険と生命保険では、「どのように保険を契約することが多いか」も異なります。

  • 損害保険:おもに損害保険代理店で契約する
  • 生命保険:おもに生命保険の営業

例えば自動車保険は、自動車を購入したディーラーや中古車販売業者が代理店となっていることが多く、代理店で契約することが多いです。

一方、生命保険については生命保険会社の営業職員を経由して契約するケースが大半です。次いで金融機関を除く保険代理店が多くなっています。

なお、自分に合った生命保険を探すなら、お金のプロであるFPに相談することがおすすめです。

マネージャーナルが運営するマネーコーチでは、FPに無料で相談することができます。
お金のことで悩みがあるという方も、この機会に是非一度相談してみてください。

違い⑥税制上の取扱い(所得控除)

損害保険と生命保険の違いで最後に紹介するものは、税制上の取扱いです。

生命保険で支払った保険料は生命保険料控除を受けられますが、損害保険は火災保険とセットで加入して支払った地震保険料のみ控除を受けられます。

控除制度は、個人だけでなく法人契約でも適用されます。

ただし、生命保険でも保険期間が5年未満のものなどは生命保険料控除を受けられないため注意してください。

参照:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
参照:国税庁「No.1145 地震保険料控除」

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損害保険と生命保険の違い【保険種別】

保険には「生命保険」「損害保険」という大きな分類があります。では、それぞれの分類の中には、どんな種類の保険が含まれているのでしょうか。

ここでは、損害保険と生命保険の種類の違いについて解説します。

  • 生命保険の種類・特徴
  • 損害保険の種類・特徴

生命保険の種類・特徴

生命保険にはさまざまな種類がありますが、その中でもよく知られているのが、終身保険、定期保険、養老保険、個人年金保険などです。

  • 終身保険:死亡時に保険金が支払われる保険
  • 定期保険:一定期間だけ死亡時に保険金が支払われる保険
  • 養老保険:老後の生活費を補うために積み立てる保険
  • 個人年金保険:定期的に年金が受け取れる保険

上記の保険は、すべて「ヒト」に起こりうるリスクに対処するためのものです。それぞれどのような特徴があるのか確認していきましょう。

終身保険:死亡時に保険金が支払われる保険

終身保険とは、家族の大切な人が亡くなったり、重度の障害になったりしたときに、家族に保険金として一定額のお金が支払われる保険のことです。

「終身」と名付けられているように、保険期間は生涯にわたって続きます。

さらに、死亡保障だけでなく保険をやめたときに返戻金がもらえるので、貯金の代わりとしても使えるのが特徴です。

いざというときの安心と、将来のための貯蓄を両立させたいという方におすすめです。

定期保険:一定期間だけ死亡時に保険金が支払われる保険

定期保険は、死亡時や高度障害時に家族に残される方々に保険金が支払われる保険です。

終身保険と同様に、保障内容は死亡保険金や高度障害保険金ですが、「定期」という名前の通り、保険期間は「10年満了」「20年満了」などの契約期間や、「60歳満了」「65歳満了」などの年齢によって、決まった期間だけに限られています。

解約すると返戻金はもらえませんが、掛け捨てタイプなので保険料は安くなっています。

子どもがまだ小さいうちに親が亡くなったり、重い障害を負ったりした場合の家族の生活を守るために使われることが多い保険です。

低い保険料で、子どもが自立するまでの期間など、必要な期間だけしっかりと生活保障を準備したい方におすすめの保険と言えます。

養老保険:老後の生活費を補うために積み立てる保険

養老保険とは、もしもの時に備えて家族に死亡保険金を受け取ってもらえる保険です。

他の保険と違うところは、最初に決めた期間が終わったら、一括で満期保険金がもらえるというところです。

期間中に亡くなってしまったら死亡保険金がもらえますし、期間が過ぎても生きていたら満期保険金がもらえます。

養老保険は、家族を守るだけでなく、自分の老後の資金にもなる保険です。

個人年金保険:定期的に年金が受け取れる保険

個人年金保険とは、毎月一定の保険料を払っておき、契約した年齢(60歳、65歳など)になったら、決められた期間(10年、15年など)または生涯の間、定期的に年金をもらえる保険のことです。

老後の生活に必要なお金を準備するために、国民年金や厚生年金にプラスして利用する人が多くいます。

損害保険の種類・特徴

損害保険とは、自分や家族、ペット、財産など、大切な「モノ」に起こるさまざまな事故や災害による損害を補償する保険です。

損害保険にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴やメリットがあります。代表的な損害保険について、詳しく見ていきましょう。

  • 自動車保険:自動車事故による損害を補償する保険
  • 火災保険:火災や水災などによる住宅や家財の損害を補償する保険
  • 地震保険:地震による住宅や家財の損害を補償する保険
  • 個人賠償責任保険:他人に対する損害賠償責任を補償する保険

自動車保険:自動車事故による損害を補償する保険

自動車保険には、法律で加入が必須となっている強制保険と、自分で選んで加入する任意保険の2種類があります。

一般的には、前者を自賠責保険、後者を自動車保険と呼んでいます。

自動車保険とは、自動車事故による自賠責保険では補えない対人賠償・対物賠償リスクに対応する保険です。自動車事故で他人や他人の財産に損害を与えた場合、その賠償額は非常に高くなる可能性があります。

しかし、自賠責保険は対人賠償のみを対象とし、しかも支払い上限が決められているため、その金額だけでは損害を全て埋め合わせることができない場合もあります。

そんなときに、自賠責保険の不足分をカバーするために、事前に自動車保険に加入しておくことが一般的です。

火災保険:火災や水災などによる住宅や家財の損害を補償する保険

火災保険とは、建物や家財が火災や風水災などの自然災害によって破損したり、失われたりした場合に、その損害を補償してくれる保険です。

火災だけでなく、落雷や破裂・爆発などの事故、風災やひょう災・雪災などの気象災害もカバーしてくれます。

さらに、水濡れや物体の落下・飛来などの不測の事態、騒擾や盗難などの人為的な被害、水害などの特殊な災害にも対応している商品やプランもあります。

火災保険は、建物と家財の二つの部分に分かれており、それぞれに応じて契約を結ぶことができます。

建物とは、建物本体のほかに、門や塀、物置や車庫などの付属建物も含まれます。家財とは、建物の中にある家具や衣服、食器や家電などの日用品も含まれます。

火災は、自分や家族の命を危険にさらすだけでなく、財産や生活にも大きな影響を与えます。火災保険は、そんな火災のリスクに備えて、安心と安全を守るために必要な保険と言えます。

地震保険:地震による住宅や家財の損害を補償する保険

地震に備える保険とは、建物や家財が地震で破損した場合に支払われる保険です。この保険は、火災保険と一緒になっているものしか加入できません。

火災保険は、火事や台風などの自然災害で建物や家財が壊れたときに保証してくれますが、地震や噴火や津波で建物が燃えたときには保証してくれません。

地震に備える保険は、火災保険だけでは足りない地震や噴火や津波などの危険に対する補償として考えられています。

個人賠償責任保険:他人に対する損害賠償責任を補償する保険

個人賠償責任保険とは、自分や家族が他人や他人の物に損害を与えてしまったときに、法律で求められる賠償金を支払うための保険です。

自転車で走っているときに人とぶつかって怪我をさせたり、スーパーで買い物をしているときに鞄が陳列棚に当たって商品を破損したり、愛犬が散歩中に人に噛み付いて傷をつけたり、などの事故が起こる可能性があります。

このような事故によって相手から請求される賠償金は、場合によっては数百万円にもなりかねません。

そんな時に、経済的な負担を軽減してくれるのが個人賠償責任保険です。普段の生活を安心して送るために、ぜひとも加入しておきたい保険のひとつです。

損害保険と生命保険の重複に注意

損害保険と生命保険のどちらとも契約している人は、双方の保障(補償)内容に重複がないか注意しなければなりません。

特に、家族で複数人以上が保険契約をしている場合は重複の可能性が高いです。以下の項目に当てはまらないかチェックしてみましょう。

  • 複数の保険で保障(補償)に重複が生じていないか
  • 家族それぞれが加入している保険で保障(補償)に重複が生じていないか
  • 人身傷害保険の対象者に重複が生じていないか
  • 弁護士費用特約の対象者に重複が生じていないか
  • 個人賠償特約の対象者に重複が生じていないか
  • 保険と共済の保障(補償)に重複が生じていないか
  • 複数の医療保険間の特約で保障(補償)に重複が生じていないか

まとめ:損害保険と生命保険の違いを理解して賢い保険選びをしましょう

損害保険と生命保険における6つの違いを紹介しました。損害保険と生命保険の違いを知ることは、賢い保険選びの第一歩です。

損害保険は「モノに関する偶発事故に対し損害を補償する保険」であるのに対し、生命保険は「人の生死に関して保障をする保険」です。

また、損害保険は実損払いですが、生命保険は定額払いとなっています。損害保険は代理店で契約することが多い一方、生命保険は生命保険会社の営業職員を経由して契約することが多いことも紹介しました。

自分に合った損害保険や生命保険を探すことに不安があるなら、お金のプロであるFPに相談することをおすすめします。

マネージャーナルが運営するマネーコーチでは、FPに無料で相談することができます。
お金のことで悩みがあるという方も、この機会に是非一度相談してみてください。

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