フリーランスは会社員とは異なり、社会保障が十分ではありません。自分で万が一の場合に備える必要があります。保険をしっかりと選んで、任意保険も検討しておかないと、困ったことになる可能性があります。
しかし、どの保険が自分に合っているのか分からないもの。この記事では、フリーランスにおすすめの保険をジャンル別に紹介します。
医療保険・収入保障保険・就業不能保険などが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
フリーランスにおける保険の必要性について
フリーランスは、公的保険制度の範囲内で利用できるサービスが限定されているので、保険に加入することが大切です。
公的保険制度では、以下のように十分な保障が受けられない場合があります。
- 傷病手当の受給ができない
- 老齢年金の金額が少ない
- 遺族年金・障害年金の金額が少ない
傷病手当の受給ができない
フリーランスの方は国民健康保険に加入していても、会社員の方が加入している健康保険と同じように「療養の給付」や「高額療養費制度」が使えます。
- 療養の給付:医療費の自己負担が3割になる
- 高額療養費制度:毎月1日 〜 月末までの自己負担額が定められた上限を超えた場合に、超過分が返金される
ところが、国民健康保険には傷病手当金という制度がありません。傷病手当金とは、病気や怪我で4日以上連続して職務不能な場合に、公的医療保険制度から支払われる手当のことです。
傷病手当金の金額は、仕事ができなくなった月から12ヶ月以内の平均収入の3分の2までです。たとえば、過去12ヶ月以内の平均収入が30万円だった場合、傷病手当金としてもらえる金額は20万円が上限です。
しかし、フリーランスや自営業の方は傷病手当の受給ができないので、病気や怪我で職務不能な場合に貯金や保険で対応する必要があります。
さらに、退職後に健康保険を任意継続していても、傷病手当金は受け取れません。また、出産のために休んだ場合にもらえる出産手当金も受け取れないことに注意しましょう。
老齢年金の金額が少ない
会社員は、国民年金保険と厚生年金保険の両方に加入しています。そのため、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを老後に受け取ることができます。
しかし、自営業やフリーランスは国民年金保険のみに加入しているため、老齢基礎年金しか受け取れません。このため、自営業やフリーランスの老齢年金の金額は、会社員のものに比べて低くなってしまいます。
厚生労働省の発表によれば、 令和4年度の老齢年金の平均受給額は、 厚生年金と国民年金の加入者には、次のような違いがあります。
- 厚生年金加入者:月額149,000円
- 国民年金加入者:月額58,000円
参考:厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
上記は平均値での比較ですが、 国民年金加入者の老齢年金の金額は、 厚生年金加入者の半数未満であることがわかります。
自営業やフリーランスが老齢年金の金額を増やす方法としては、付加年金や国民年金基金、個人型確定拠出年金(iDeCo)などがあります。
遺族年金・障害年金の金額が少ない
フリーランスは、老齢年金だけでなく遺族年金や障害年金も受け取れます。しかし、基礎年金のみが対象となるので、受給額は低めです。
公的年金に加入していた方が一定の障害の判断を受けたときに受け取れる年金遺族基礎年金は、子どもがいない配偶者には支給されません。遺族厚生年金がもらえないことで、受給額が減るだけでなく、受給の条件も厳しいものになります。
さらに、障害基礎年金は障害厚生年金と比べて、受給の範囲が狭いです。具体的には、障害基礎年金は障害の等級が1級か2級でないと受け取れませんが、障害厚生年金は障害の等級が3級でも受け取れます。
フリーランスになると、老後の年金額はもちろん、亡くなったり障害になったりした場合の年金額や条件も変わってしまいます。
フリーランスにおすすめの保険の選び方
フリーランスにとって、保険は大切な備えです。保険を選ぶときに注意したいポイントについて紹介します。
所得保障保険・就業不能保険で収入を確保する
フリーランスは、怪我や病気で仕事ができなくなるリスクがあります。そのときに、所得保障保険か就業不能保険のいずれかに加入しておくと安心です。
「就業不能保険は生命保険会社」「所得保障保険は損害保険会社」が提供している保険で、どちらも保険金をもらうための条件は同じです。保険の特徴も似ているので、選ぶときには比較できるポイントを知っておきましょう。
所得保障保険の特徴
所得保障保険は、もらえる保険金の額が年収や会社によって決まり、もらえる期間が短めのものが多いという特徴があります。
怪我や病気の保障期間を短くして、費用を抑えて備えたい人に向いている保険タイプです。
就業不能保険の特徴
就業不能保険は、もらえる保険金の額が年収によって10万円から50万円の範囲で選べ、長い期間の保障が可能な特徴を持っています。
そのため、怪我や病気で長期間、あるいは一生仕事ができなくなる可能性がある人におすすめの保険です。
所得保障保険・就業不能保険のどちらも免責期間(保険金をもらうまでの待ち時間)が保険会社によって異なります。
フリーランスの場合、仕事ができないとすぐに収入がなくなってしまうので、できるだけ早く保険金をもらえるよう免責期間を比較して各保険を検討することも大切です。
遺族に安心を与えるなら収入保障保険がおすすめ
フリーランスは、仕事ができなくなった際の保障が少ないので、生命保険の費用を抑えて負担を軽くし、万一の場合に備えておくことが重要です。
収入保障保険の特徴は、以下の通りです。
- 費用が普通の生命保険よりも安い
- 更新がないので保険料が上がらない
- 保障が60歳まで継続する
普通の生命保険と比べて半額程度の費用で加入できます。普通の生命保険は一度に大きな金額が支払われますが、収入保障保険は毎月給料のように遺族に保険金が支払われます。
収入保障保険は契約期間によってもらえる金額が減りますが、同時に支払う保険料も減る商品もありますので比較してみましょう。
タバコを吸わない人や健康な人は、さらに保険料が安い保険会社もありますので自分の体の状況に合わせて保険会社を比較検討することもできます。
加入するのは、普通の生命保険か収入保障保険のどちらか1つで十分ですが、費用を節約して子供の年齢に応じたお金を残したいなら収入保障保険がおすすめです。
収入保障保険は支払い免除特約があると安心
収入保障保険は、仕事ができなくなったときに保険料の支払いがストップする保険がおすすめです。フリーランスは、仕事ができないと公的保障が少なくて保険料の支払いが困難になります。
しかし、生命保険を解約すると、家族にお金を残せません。そこで保険料を負担しなくてもいいように、収入保障保険には「三大疾病」「怪我や病気で治療」になったときに保険料の支払いが免除される保険もあります。
免除される条件は保険会社によって異なりますので、内容を比較して収入保障保険を選びましょう。
仕事ができなくなるリスクに備えるなら保障内容を比較しよう
フリーランスは、怪我や病気で治療が必要になっても、入院しないことが多いです。そのため、所得保障保険・就業不能保険を選ぶときは、自宅で療養する場合にも保障が受けられるかをチェックしておきましょう。
怪我や病気で仕事ができなくなると、一生自宅で暮らすことになる可能性もあります。仕事ができなくなるタイミングは予測できません。自分の仕事において、どんなことが原因で仕事ができなくなるのか考えて、必要な保障を提供してくれる保険会社を選びましょう。
老後の計画を立てる
保険プランを選ぶときには、今の収入と働きたい年齢、老後に必要なお金の目安などを考えてみましょう。その上で、足りない部分を補うために個人年金保険に加入しておけば年金が少なくても安心です。
保険料を高く設定しすぎないように、今の生活に支障が出ないようにしましょう。個人年金保険の特徴は銀行よりも高い利率ですが、途中で解約すると元本が減るリスクもあります。
使える貯金を別に確保した上で、保険料をどのくらい支払えるのかしっかり見極めていくのがおすすめです。
個人年金保険は利率で決めよう
個人年金保険は、60歳までに保険料を支払って、支払った金額が返戻金として受け取れる保険です。しかし、返戻金の利率は会社によって違いますので、比較することが大切です。
保険に加入するなら、預けたお金が増えて戻ってくる保険が良いもの。そこで重要なのが利率の比較です。目安としては、利率6%以上の保険がおすすめです。
フリーランスにおすすめの保険8選!保険料やメリットを紹介
フリーランスに必要な保険の種類をチェックしたら、実際に提供されている保険商品を見ていきましょう。
以下では、医療保険・収入保障保険・就業不能保険・損害賠償保険に分けておすすめの保険を紹介します。
- 【医療保険】フリーランスにおすすめの保険2選
- 【収入保障保険】フリーランスにおすすめの保険3選
- 【就業不能保険】フリーランスにおすすめの保険3選
- 【損害賠償保険】フリーランスにおすすめの保険3選
【医療保険】フリーランスにおすすめの保険2選
医療保険に特化した、フリーランスにおすすめの保険を2種類紹介します。
- オリックス生命保険「女性向け医療保険CURE Lady Next」
- メディケア生命「新メディフィットA」
おすすめ医療保険①オリックス生命保険「女性向け医療保険CURE Lady Next」
オリックス生命の医療保険は、現代社会で増加している7大生活習慣病に対応した保険です。
三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)はもちろん、糖尿病や高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎不全なども充実した保障を提供します。
女性専用のLadyタイプでは、女性特有の疾患にかかった場合に、「女性入院給付金」が5,000円上乗せされるのも嬉しいポイント。入院の有無に関係なく約1,000種類の手術にも保障があります。
参考:オリックス生命保険「女性向け医療保険CURE Lady Next[キュア・レディ・ネクスト]」
おすすめの医療保険②メディケア生命「新メディフィットA」
メディケア生命の医療保険は、以下のような手厚いサポートが特徴の保険です。
- 保険料が一生変わらない
- 入院給付金の支払日数が最大1,095日
- 日帰り入院もカバー
オプションを付けることで、がん・心疾患・脳血管疾患の三大疾病の保障を制限なしにしたり、女性の病気に対応したりと、自分のニーズに合わせてカスタマイズできます。
保障内容をシンプルにして、保険料を低く抑えたいという人にもおすすめの保険です。
参考:メディケア生命「新メディフィットA」
【収入保障保険】フリーランスにおすすめの保険3選
収入保障保険に特化した、フリーランスにおすすめの保険を3種類紹介します。
- フリーランス協会「所得補償保険」
- SOMPOひまわり生命「じぶんと家族のお守り」
- あいおいニッセイ同和損保「所得補償保険」
おすすめの収入保障保険①フリーランス協会「収入・ケガ・介護の保険」
フリーランス協会が提供する所得補償保険は、フリーランス協会の会員であれば誰でも加入できます。
所得補償・障害補償・親の介護サポートの3つの保険が1つになった保険となっており、補償期間は1年ですが、オプションで長期に延ばすことも可能です。
参考:フリーランス協会「収入・ケガ・介護の保険」
おすすめの収入保障保険②SOMPOひまわり生命「じぶんと家族のお守り」
SOMPOひまわり生命が提供する収入保障保険は、七大疾病や精神疾患で仕事ができなくなっても支援してくれるプランが付いています。
そのため、さまざまな病気や怪我の不安がある方にぴったりの保険といえます。
参考:SOMPOひまわり生命「じぶんと家族のお守り」
おすすめの収入保障保険③あいおいニッセイ同和損保「所得補償保険」
あいおいニッセイ同和損保の所得補償保険は、最長2年間の収入保障が受けられる保険です。加入時、健康状態の自己申告のみで簡単に加入できます。
特約で妊娠や出産の際の保障もできるので、フリーランスの女性にとって有利な保険です。
参考:あいおいニッセイ同和損保「所得補償保険」
【就業不能保険】自営業者におすすめの保険2つ
就業不能保険に特化した、フリーランスにおすすめの保険を2種類紹介します。
- アクサダイレクト生命「働けないときの安心」
- ライフネット生命「働く人への保険」
おすすめの就業不能保険①アクサダイレクト生命「働けないときの安心」
アクサダイレクト生命の保険は、病気やケガで長期間働けないときに、毎月の給付金で生活を助けてくれる内容となっています。一般的には保険金が支払われない、うつ病などのメンタル疾患もカバーしてくれるのがポイントです。
他の保険よりも保険料がお手頃なので、最低限の保障でも月々1,000円台から加入できる場合もあります。
参考:アクサダイレクト生命「アクサダイレクトの働けないときの安心」
自分に合った就業不能保険②ライフネット生命「働く人への保険」
ライフネット生命の保険は、病気や怪我で長期間働けないときに、毎月の給付金に加えて、一時金も支給される内容となっています。
- 14日以上の入院:10万円の入院見舞金
- 精神疾患による業務不能:30万円〜150万円の精神疾患就業不能一時金
- 仕事復帰時:30万円〜150万円の復帰支援一時金
精神疾患は2年に1回、最大5回まで支払われるので安心です。保険期間は55歳〜70歳まで4つから選べるので、自分の仕事やライフスタイルに合わせて期間を設定できます。毎月の生活費に加えて、一時金で不測の事態に備えたい人にもおすすめの保険です。
参考:ライフネット生命「働く人への保険」
【損害賠償保険】フリーランスにぴったりの保険3選
損害賠償保険に特化した、フリーランスにおすすめの保険を2種類紹介します。
- フリーランス協会「賠償責任保険」
- GMOクリエイターズネットワーク「フリーナンスあんしん補償」
ぴったりの損害賠償保険①フリーランス協会「賠償責任保険」
フリーランス協会の損害賠償保険は、損保ジャパンや東京海上日動など、大手保険会社4社が連携して提供する保険です。フリーランスとして仕事をする側はもちろん、仕事を依頼する側も保険の対象となるのがメリットです。
保険金の上限も1億円と、十分な保障があります。相手にケガや物の損傷を与えた場合はもとより、情報の流出や納品物の欠陥、偶然の事故で納期が遅れたり、著作権を侵害したりといった、フリーランスならではのトラブルにも対応しています。
フリーランス協会の会員であれば誰でも加入可能で、会員サービスや福利厚生も充実しています。フリーランス専門の保険を探している人には、おすすめの保険です。
参考:フリーランス協会「賠償責任保険」
自分に合った損害賠償保険②GMOクリエイターズネットワーク「フリーナンスあんしん補償」
フリーランス協会の保険と同様にさまざまな場面で保障されますが、保険金の上限は5,000万円とやや低めです。しかし、フリーナンスに無料で加入すれば、保険期間中は保障が無料で付くのが魅力となっています。
フリーナンスに参加すると、所得保障保険も60%割引になったり、売掛金を当日に現金化できたりと、いろいろなサービスがあります。
フリーランスが強制加入となる3つの公的保険
フリーランスの方は、サラリーマンとは違う保険制度に参加しなければなりません。国が定めた制度であり、健康や生活の安定のために大切な役割を担っています。
フリーランスの方は、次の3つの公的保険に入ることが必要です。
- 国民健康保険
- 国民年金保険
- 介護保険
国民健康保険
国民健康保険は、フリーランスの加入が必須の公的保険です。病気やケガで医療を必要とする時に、国が補助してくれます。
国民健康保険に加入すれば、病院や診療所での治療費の30%しか自分で負担しなくて済みます。また、家族がいる場合は家族も一緒に保険の対象となるので、家族全員が保険のメリットを享受できます。
ただし、保険料は収入に応じて変動するので、収入が高いほど保険料も高くなります。
国民年金保険
国民年金保険は、フリーランスの方が老後の備えとして加入する公的保険です。加入者が定められた年齢になると、決まった期間、年金を受け取れる制度です。
国民年金保険には、基礎年金として第1号被保険者(自営業者・フリーランス)と第3号被保険者(主に配偶者)が含まれます。年金の金額は、加入した期間や支払った額に応じて変動します。
介護保険※40歳以上のみ
介護保険は、40歳以上のフリーランスが対象の公的制度です。保険料は市区町村によって異なることがありますが、基本的には収入が高いほど保険料も高くなります。
フリーランスの保険に関するよくある質問
Q.フリーランスが支払う保険料はどのくらいが妥当ですか?
A.フリーランス・個人事業主が加入する保険の保険料は一概にはいえません。個人で生命保険に入るときと同じように、必要な保障を保障内容と保険料のバランスで判断することが大切です。
Q.生命保険料は経費になりますか?
A.経費として認められるものは事業を行うのに必要な費用であり、生命保険は個人的な支出とされるため基本的には経費にできません。ただし、例外的に経費にできる場合もあります。それは、従業員に対して入れた保険の場合です。従業員に対する保険は、福利厚生として経費に計上できます。
まとめ:自分に合った保険でリスクに備えよう
この記事では、フリーランスに必須の公的保険やおすすめの保険を紹介しました。フリーランスは公的保障が少ないので、保険での自己防衛は必要不可欠です。
自分や家族の生活を守るために、自分の状況や要望、ライフスタイルに合わせて保険を選びましょう。まずは保障の優先度を決めてリストアップし、自分にとって重要な保障ができる保険を探してみることから始めてみてください。